2010
12/10
G杯グレ決勝大会 ~旅立ちと出会い~
釣行記 / comment : 8 / trackback : 0
2010年11月最後の夜。
仕事を終えて家に戻り、いつものように三男君と遊ぶ。
ベットの上で遊んでいると、疲れ果てたのか満足したのか、三男君は眠りについてしまった。
9時半から倉庫へ行き、慌しく道具を段ボールへ詰める。
「これでよし。忘れ物は無いかな・・・」
翌日、宅配便へ集荷してもらい、皆の想いがパンパンに詰まった道具は一足先に大分県へ旅立った。
水曜日の午後位から、何か変な緊張感に常に包まれ、寝るには寝るんだけど眠りも浅いようで何度も目が覚める。
というのは、出発日の天候がどう考えても北西暴風の大荒れなのだ。
ただでさえ大の飛行機嫌いの自分は、仕事でも常に新幹線や車を使う事からも分かるように、あの鉄の乗り物を信用していないのだ。
未だに加速して勢だけで浮いてるようにしか思われん。
出発日が近づくにつれ、真面目に「遺書でも書いたほうがいいかな?」なんてアホ事を、今思い出せば真剣に思っていたかもしれない。
そんな事もあり、急激に家族のことが愛しくなったりして、殆ど眠らんうちに土曜日の朝を迎えた。
「よし、行ってくるね」
とは言ったものの、女房は涙目になっているし三男君は泣きながら足から離れんし・・・。
「こらこら、直ぐに帰ってくるからさ・・・ふぅ。」
言ったこっちも悲しくなってくる。
なだめるのに30分も掛かり、ようやく家を出た。
決勝大会出場選手のうち、こんな出発の仕方してんのは自分だけだろうな。
空港へ到着。
やはり西系の強風は治まるどころか、波浪警報まで発令され、ますます勢いを増して吹いていた。
飛行機に乗るのは何と20年振りである。
全く乗り方が分からないし、変に格好つけても時間の無駄だと思い、その辺に立っていた小奇麗なお姉さんに
「すみません!初めてなんで色々教えてください」
「いらっしゃいませ。チケットを拝見させてもらえますか?」
何故か笑わたような気がしたが、綺麗なお姉さんは詳しく丁寧に教えてくれた。
う~む・・・しかし・・・頼み方が変だったか?
そういや、童○でも捨てるような言い方だったな・・・ま、いいか。
当たり前の事だが、羽田から来る飛行機が着陸しない事には乗る飛行機がない。
程なくすると場内アナウンスが流れ・・・
「只今、着陸を再度試みますが、どーたらこーたら○○の場合は仙台空港へ着陸します」
げ?それはやばい。
頑張れ機長!!
お願いが届いたのか、何とか着陸に成功し、僕も緊張しながら鉄の塊に乗り込んだ。
「頼むぞ、信用していないけど」
エンジン音が響き、滑走路を走り出す・・・グォって変な感触が尻に掛かり離陸。
と同時に激しい揺れと「ガゴン!ガゴン!ギュィィィーー」と機体が大きく傾く。
「うわぁぁ。このまま四ツ小屋へ降りるなんて事はないよな・・・うぇっ」
真っ白な雲の中へ突入し、大きな揺れを数十秒繰り返した後、ぐぃーーーん・・・太陽が爛々と輝く雲海の上に。
「ふぅ・・・危なかった、死ぬかと。良く頑張ったな、機長。君に乗ってよかったよ。ありがとう」
実際は危なくも何とも無く、機長も普通なのだろうが、やはり飛行機は大嫌いである。
そうして、その後も揺れる事も無く羽田へ着陸したものの、若干の遅れもあり、荷物を持ちながら福岡便のゲートまで走る。
これがまた正反対の場所にあるのだ。もっと田舎者を優遇してもらいたいもんだ。
既に搭乗手続きが始まっており、慌しく機内に乗り込んだら座席がガイジンに囲まれた席であり
「えぇ~っと、ソーリ?いや、英語じゃないかな、スンマセーン、コレコレ、ニモツゥヨセテクダサイ」
何とか通じたらしく、ガイジンに挟まれた席に座った。
羽田~福岡間は飛行機が大きく天気も良かったので揺れも殆ど無かった。
やはり数日前からの疲れもあったのか、ウトウトとしていたら着陸態勢に入り・・・無事に福岡到着。
まずは一安心なのだが、これからがまだまだ大変なのである。
予定では、これからレンタカーを借りて大分市内のビジネスホテルで一泊し、翌日は大会会場である米水津の沖磯で試し釣り。
予約してあったレンタカー店をようやく見つけ、慌しく福岡を出発する。
高速道路に入り、一時間半も走っただろうか。ようやく大分市内へ入った。
当然、大会では前泊等の費用は出ないため、格安のビジネスホテルを予約したのだが、これがまた分かり辛い場所にあり、到着したのは予定から大幅に遅れた9時半だった。
先に大分入りしていた、皆の想いの詰まった荷物を車へ運び、開封した後、明日の準備を簡単に済ませた。
そんなこんなで、部屋に入って落ち着いたのは11時。シャワーを浴びていたらもう11時半。
米水津の漁港へ行く前に、予約したエサも取りに行かないといけないし、また迷う可能性もあるし・・・ええぃ、もう行こう。
「えぇぇ?もう行かれるんですか?」
ホテルの方が驚くのも無理はない。荷物取ってシャワー浴びただけなんだから。何しに来てんだか。
昼から何も食ってなかったため、コンビニへ寄ってパンを食いながら深夜の高速道路へ再び乗る。
案の定、釣具屋を探すのに時間が掛かり、米水津へ着いたのは午前3時。
米水津の漁港前の通りには、数艘の磯渡し(現地では瀬渡しと言う)船宿が隣接しており、道路は日曜日と言う事もあって混雑していた。
「えぇぇ・・・っと、功明丸はどこかな・・・あった!」
どの船に乗ろうか迷ったが、名前でこの船を選び、船頭さんに電話を入れておいたのだ。
何せ名前が良い。僕の名前は「功」である。功が明るい丸なんて最高じゃないか。
しかし駐車場は既に満車で、周辺は「GFG○○支部」「名釣会」などと背に書かれた方々で埋め尽くされていた。
「グッ」と腹に来るような、懐かしい緊張感が更に高まる。
そういや昔はいつもこうだったっけ・・・。
間もなくして船頭さんが現れ、常連さんたちとの談笑や今日の釣り場?などの話で盛り上がってる。
さて、ここに居ても仕方がないと思い、勇気?を出してその輪の中へ向かおうとしたら
「きしさーん、きしさん、おる??」
「あ、はい!はいはい!」
とても面倒見のよい船頭さんで、僕が秋田から来ると言う事もあって探してくれてたみたい。
「5時前には出よるからね、車はさ、こっち満車だから荷物だけおいて・・・etc」
丁寧に教えて頂き、車も誘導してもらう。
秋田を出発して12時間。この時、ようやく緊張の糸が半分だけ切れてくれたような気がした。
5時。船のエンジンが掛かり、数艘の船が一斉に漁港を出る。
船の大きさは大竹丸の2倍くらいの大きさで、トイレも完備している。
何箇所かへ船を着け、次々に釣り人が降りていく。
「よ~し、つぎ、きしさん行ってみようか!」
「はい、お願いします!」
巨大なサーチライトで磯が照らされ、荷物を持とうとしたら
「そげなコツゥしなんな、いいにぃ」
ここでは、基本的に手ぶらで降りる決まりらしい。
若旦那や他の釣り人から荷物を渡してもらい
「ほな頑張ってなぁ。後で様子見にくるからさ」
太いエンジン音を響かせながら、功名丸は去って行った。
さて、ここは湾奥?の地磯かな?
明かりという明かりは何も見当たらなかったが、空を見上げるともの凄い星の数。
夜明けまで1時間以上もあるため、足場の良いところを探して寝転んだ。
こちらの夜明けは秋田よりも随分と遅い。
しかし星が綺麗だ・・・あいつらは起きたかな。
携帯の待ち受け写真を眺め・・・どうやら少しだけホームシックにかかったようだ。
様々な想いが頭を駆け巡り、そしてようやく夜が明けてきた。
これが米水津の磯か。
仕掛けとコマセをゆっくり作り、「今日からよろしくお願いします」と一礼してから釣りを始めた。
・・・が。
ここは加茂か?(苦笑)
撒けば撒くほどアジが集り、その他、名前の知らん魚が次から次へと集り始める。
アジの下にはモイカ?が何杯もおり、足下には1m近いウツボ?がニョロニョロ。
大遠投しても同じ。潮も動かんではないか。
う~ん・・・イメージしてたのと全く違う海だな。
こんな中でグレ釣るのかな。
まぁ、黙っていても仕方が無いので、オニューのウキの浮力を確かめながら海を観察して時間を過ごした。
9時頃、船頭さんから電話。
訛っていて何を話しているのか良く分からなかったけど、とりあえず磯換えしてもらえる見たい。
他のお客さんも含めて別のエリアへ移動。
「よ~し、きしさん、ここでやってみるか」
「はい!お願いします」
と言って磯に下りたものの、もの凄い激流のアテ潮。
海を見て船頭さんの顔を見たら向こうも僕が何を言いたいか察知したらしく
「大丈夫、今に潮が変わるから」
そっか、そういや昼頃に潮止まりだったっけが。
試しに仕掛けを入れたが、釣りになるような速さでは無いのでしばらく休んでいると・・・あちこちに渦が出来はじめ、徐々に潮が良い感じに流れ始めた。
うん、何かようやく「グレ場」らしくなってきたな。
とにかく、僕の釣り方で米水津のグレが釣れるのかが1番の心配だった。
ただ、この数週間で、色々と仕掛けやらラインやら悩んだのは事実だが、元々そんなシビアな腕も無い男である。
前入りして何かが劇的に変わる事などあるはずも無く、色々と試すのはかえって混乱するだけだろうという結論に達していた。
では、何をするのか。
単純に、いつもの仕掛けで、グレの居る場所を探すだけである。
これでダメだったら、明日は全く持って、通用すらしないだろう。
正に未知の世界なのである。
ローラー作戦ではないが、一つ一つポイントと棚を潰すように・・・棚と仕掛けの角度に注意しながら。
際から大遠投して沖の本流まで、何度も何度も棚を変えて探ってみる。
青くて、一見すると「愛しのサバ?」に間違えそうなエサトリは大量に居るが、タイミングさえずらせばエサは通る感じ。
本日、ようやく魚らしい反応で釣れたのは・・・
なんだこりゃ?鯛を細くしたような感じだけど。
続けて、本流に引き込まれる潮へ乗せていると、いきなり竿を引っ手繰られた。
あまり男鹿では体感できないような乱暴な引きである。
大高さんからお借りしたアテンダー1.25号が根元からひん曲がる。
そしてようやく浮かせたのは・・・
40後半のバリ(アイゴ)
これ、確か毒あるんだよね。慎重にハリスを切り海へ放流。
しかし良く引く魚だ。本戦では掛かりませんように。
んでも、今の潮筋はいい感じだったな。
どうも、本流に乗せちゃうと食わない・・・というか、食うんだろうが僕の腕では仕掛けの馴染みが不味いのだろう。
ではどこか。
本日初めて「臭い」エサの取られ方。
「これだべ、たぶん。いや、絶対にこれだ」
全身疲労と猛烈な寝不足なのに、何年も前に経験していたようなワクワク感が蘇る。
数投後、ズバッ!とウキが入り、アワセと同時に竿が気持ちよく弧を描いた。
左右に走り、足元で多少の突っ込みを見せ、上がってきたのは・・・
ふぅ。ようやく釣れた。嬉しいなぁ。
魚は見えないけど、今の棚は浅かった。
最初のコマセにエサトリが群がり、仕掛けを入れて追いコマセを2ヒロ半程度であわせると、エサトリの下から一気に来るような感じを受けた。
「むふふ・・・どれどれ」と同じ攻め方をしたが、連続で針ハズレやエサを離されたり。
噂通り、場所によってはかなり「スレ気味」なのかな。
その後、針を小さくしたり(3~4番)試しに1号ハリスを使いながら、6尾を追加。
なんとなく分かった。
というか、魚が居る場所が分かったと言ったほうが正解か。
男鹿で狙うような場所とは少し違う。
前入りした収穫があったな。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
釣りを終えたら、今度は急いで佐伯市内へ向かう。
随分と休んでいない気がするが、疲れはまったく無かった。
ホテルでチェックインを済ませ、前夜祭の会場へ向かった。
会場では高園名人、池永名人を始め、名だたる常連名手が十数名、各地の予選を勝ち抜いてきた猛者がズラリ。
なんか凄い景色と雰囲気・・・すげぇ。
「何か俺ってば場違・・・いや、何しに来たんだ。サイン会に来ているんじゃない。試合に勝つために来たんだぞ。」
自分に言い聞かせる。
シード選手、推薦選手などの紹介、自己紹介ののち、運命の抽選が始まった。
迷いも無く、最初に手に触れた番号札を引く。
「男鹿会場 岸功さんは、31番!」
およ?待てよ・・・確か33番は・・・
常に各大会の上位へ入賞し、何より昨年度「第28回G杯グレ」の覇者、幸森大輔選手と同組。
また、27回大会の覇者、笹森選手とも同組。
僕にとっては最高の組み合わせ。
何より、最高峰の方々と対戦できる訳であり、マグレなんかは絶対に起こらない。
期待感とワクワク感で、ちょっと体の震えが治まるのに時間を要した。
鹿児島の選手、伊豆の選手、愛媛の選手、そして久保野孝太郎さんと同部屋。
談笑も程ほどに、11時頃に寝床へ入った。
コメント
投稿 : 若旦那|2010-12-10
うお~!! いよいよアップ開始しましたな!!
しばらく楽しめそう^^
ワクワクしながら読ませてもらいま~す
投稿 : なか|2010-12-10
頑張れ~郷土の代表!!
でも緊張してないから大丈夫だな。
土産話が山盛りになりそうだ砂~。楽しみにしてま~す。
投稿 : Ba2|2010-12-10
いやぁお疲れ様でした♪
バリも40オーバーともなると、相当引きまっせ。
決して上品な引きとは言えないけどネ(笑)
続きを楽しみにしてまっす(^^)
投稿 : ヨリ|2010-12-10
いやぁ〜!臨場感溢れる文章表現と貴方の家族愛&釣りにかける情熱!そして私にとっては未知の世界の画像の数々(@_@)すっかり引き込まれて読ませて頂いておりますm(__)m続きが楽しみだぁ!!あの、めんちょこ三男君は父上の帰りを心待ちしていた事でしょうね(^o^)/にしてもやっぱり凄い舞台だね!初めて秋田県民会館のステージに立った時の何倍も凄い世界だった事でしょうね((笑))ちょっと古過ぎるマニアックネタを挟んじゃいましたが、さていよいよ次のUPは戦いの模様ですかな(^o^)/楽しみにしてます!
投稿 : きし|2010-12-13
>若
引っ張りまっせぇ~
来年まで引っ張ろうかな(笑)
投稿 : きし|2010-12-13
>なかさん
いやいや、流石に緊張はしましたよ(^^;
アドレナリン出っ放しで。
ま、続きを楽しみにしてください。
ありがとさんでm(_ _)m
投稿 : きし|2010-12-13
>Ba2さん
そうそう、しんたげ引いだっす!
話しには聞いてましたが、すんげパワー。
あれバラさないだけ、少しは成長したんかな(笑)
そういやBa2さんは九州でしたね。
いいっすな~九州は(^^)
定年後は向こうでご一緒させでけれっす。
投稿 : きし|2010-12-13
>ヨリ君
先日はどうもでしたm(_ _)m
>県民会館
随分と古いネタだ(笑)
あれは何とだったかなぁ・・・そうでも無かった気が?
お互いに練習だけはしんたげ積んでいたからね(^^)
いやいや、懐かしい。
釣りはいいっすよ。
これからも、どんどん嵌ってください(^^)
黒い青いによろしく(爆)